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「だが待て。アルカディア機構の本拠地があったサンクルズは今も政府の監視下にあるはずだ。今も定期的に調査隊が入っていると聞いているが…。」
『サンクルズではないよ…。良く思い出してくれ。アルカディア…いや、ジグが天界に対し宣戦を布告した後、各地の貴族や国が援助を申し入れただろ?』
「まさか…。どこかが奴らを匿っているとでも言うのか?この二十年、俺たちに気取られずに?」
『そうとしか考えられない。僕も姿を隠しながら彼らの足跡をたどっていたんだけど、とうとう本拠地までは掴めなかった』
「…奴らはすぐに動き出すと思うか?」
『そこは僕にもわからない…。でも、彼らだって時間が欲しい筈だ。彼らの戦力は以前と比べるとかなり落ちている。疑似スティグマも、そのほとんどが回収され、ジグが制作を命じた対神格用兵器もほとんどが壊され、残った少数の兵器は各地に散らばっている。……恐らく、天界が議論を講じている間にその回収をするはずだ』
「……二十年前と同じ物取り合戦が始まるわけか。」
『似ているようで、似ていない…。そんな状況だね』
「となれば、早いところ情報を開示させよう。世間の目で奴らの本拠地を捜す。」
『民衆の目を使うわけだね…。確かに、今はそれが最善だろう』
「……お前は今後どうするつもりだ、ソルヴィ。」
蓮はずっと無言だったソルヴィへ問う。
明らかに元気がない顔で無理やり微笑もうとするが、痛々しい笑みが漏れるだけだった。
「儂は…しばしナギサとおる。この事実は儂ら英雄にとって、あまりに衝撃的すぎる。ウォンのバカが先走らないよう、儂らで押さえておく。」
「あまり考え込むなよ。…それと、たまには家にも来い。ロッティもお前に会いたがっていたし、お前にある頼みごとをしたい。」
「頼みごと、とな?」
「あぁ…。兄から悪い影響を受けた妹の指導をして貰いたい。」
「……少し時間をくれ。」
「分かってる。急かそうなんて思ってない。…ただ、悪い方向にだけは考えるなよ。」
「うむ…。」
ソルヴィは蓮の肩から手を離し、重い足取りで部屋を後にした。
そんなソルヴィの背中を心配そうに見ていた蓮だが、一度長く息を吐き、バルドルへ向く。
「俺はそこの少女を鍛えればいいわけだな?」
『あぁ。君が今まで培ってきた経験や戦術、全てを彼女に叩きこんでほしい。…アルも彼から手ほどきを受けるかい?』
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