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手のりサイズのそれを茜は部屋の出窓の方へ持っていき、フッと白い息をかけると織り鶴達は本物さながらの動きをして寒空に舞い上がり、それぞれ別の方角へ飛び去っていった。
「知り合いの情報屋と信頼できる同業者に送った。少しはマシなもん持って帰ってくるやろ」
式神が消えていくのを見守り、茜は窓を閉めてまた椅子に沈み込む。
「やれ、にしても……いつも以上に働いとる気ィすっけど、進まへんなあ、ハラ減ったし、……そろそろ飯行くか」
と、春一の方を見上げる茜だが、「お前は特に疲れてへんよな」と、表情を歪ませる。
「なんやのん、俺がこっちでパチパチ調べとるっちゅーのに、お前はソファーでずーっとごろごろごろごろ、さっきから何読んでるん!」
聞かれて春一は今まで持っていた分厚い書籍を茜に渡す。
「なに……心理学の本か?」
「まあ、そんなところ、この著者が色々と面白いこと書いててね」
「ちょ……、事件と関係ないやろが」
「数時間掛けておれが関係ないことをやっていたと思う」
「なんか、掴めたんか」
「まあ、仮説は立てられそうだよ、あとは確信する材料が欲しい」
言って、春一は茜の脇からパソコンのキーボードを打ち始める。
検索バーに打ち込んだワードは。
「茜、『不幸の手紙』って知ってるか――」
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