二十二、結ばれる定めの人

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そしてまた数日が去る。 後藤様からの使いの者が、やって来た。 「敏乃様。後藤様の命にて、お迎えに上がりました」 「えっ?」 「詳細は後藤様御本人から、御伝えされるとの事にございます」 なんだろう…。 私は、迎えに来た牛車に乗り込む。 何か、した? 何故、私に? 不思議な思いを抱えながら、後藤様の御屋敷へと入る。 懐かしいなぁ。 助けて頂いて、御礼に上がってから。 もう何年もこの御屋敷には来ていなかったから。 あの時、お世話してくれた女達は、私を見ては嬉しそうに手を振って下さる。 本当にいつ来ても、ここの人々は善い人々の集まりだ。 「こちらへ」 「はい」 「後藤様。敏乃様を御連れしました」 「通せ」 引き戸を開けられて、私は畳みに足を着く。 すると、なんとも後藤様の隣りには永田様まで居た。 やだ…嘘っ、なんで?…。 脈が早くなる。 また胸が高鳴って。 音が聞こえてしまいそう。 恥ずかしい。 永田様はやはり、なんとも美しく素敵な御方であった。 「敏乃よ、こちらに座りなさい」 後藤様は私の肩を持って、なんと永田様の前に座らさせられた。 えぇっ?!…こ、こんなに近く?! 真っ正面では、俯くしかないじゃないの。
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