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『お前、気にしてないなんて嘘だろ?昨日、オンナみたいって言われてすげーヘコんでたじゃねーかよ』
勝ち誇ったように笑うボス。
(こいつ…ミツの弱みを握ったと思って強気でいるんだ)
カッコわりぃ…。
『おい、"ミツ子"。いつもライムの世話で大変だなー』
『なっ…!?』
『あ、"おミツ"のがいいか?お前、時代劇とか好きだもんなー!将来いいお嫁になれるんじゃねぇの?ぎゃはははは!!』
『てめぇ…!』
ライムはボスに飛びかかろうとしたが、佐竹に腕を掴まれ止められる。
『相手にするな。教室戻ろう』
『なんでだよ!このまま言われっぱなしでいいのかよ!?』
『今のコイツになに言ったって無理だよ。キレて損するのはライムだろ。気持ちは嬉しいけど、オレの事でライムが損するほうが嫌だ』
『…っ、だけど』
納得いくわけない…
『噂なんて時間が経てばみんな忘れるんだから。オレは大丈夫』
そう言って佐竹はニカッと笑った。
変な噂流されて一番嫌な思いしてんのは佐竹なのに。
(オレのことなんか考えなくていいのに。もっと自分のこと気にしろよ…)
そうは思うけど、佐竹の気持ちを無駄にしてしまいそうな気がしてこれ以上は何も言えなかった。
それから噂はどんどん広まっていった。
もちろん嘘だとわかっていて慰めてくれる友達もいたけど、なかなか噂が消滅することはなかった。
佐竹自身、からかってくるヤツがいても『相手にするな』と言って否定しようとはしなくて。
ライムは納得いくはずもなかったが、佐竹の言葉に歯向かうことはできなかった。
一度流れてしまった噂はキレイに消すことは難しいけど、時間がいつか皆の記憶から噂を薄れさせてくれる。
(それまで耐えるしかないのかな…早く消えてほしい…)
そう願いながら学校生活を過ごした。
その中で佐竹が時々見せる笑顔は以前とは違うものになっていて。
笑っても心の底から笑っていない、そんな上辺だけの笑顔。
消えていったものは噂ではなく佐竹の本当の笑顔だった。
この時から短髪だった佐竹の髪は伸びていく。
それは彼の心境を表しているようだった。
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