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「初めまして、皆様。私の名前はイヅミです。
早速ですが、この月型の金具がスレイブ・コントロール・メソッド、SCMです」
私は額に浮かんだ汗を拭き、そう言った。皆は僅かに口を開け、私に注目している。
ここは新宿区にある、とあるマンションの一室。
3LDKの間取りで、賃貸として借りている。家賃は月16万円。
さきほどまで、この部屋ではけたたましい『キュィーン』という電動音が鳴っていた。
私の目前には9名の人物がいる。働き盛りの男性がほとんどだけれども、女性もいる。
いずれも、今日初めて会ったばかりの人間だ。
私は昨日買ったばかりの、Aラインの冬物のワンピースを着て、手に持った月型の金具を掲げた。
「今から一年半前、ネット上において、SCMは300万円の値が付きました……ご存じの通り、この器具で奴隷が作れます」
私は、隣に立つ男イチを見つめた。
イチには髪、眉をはじめ体毛がない。
今は黒いシャツを着て、黒いジーンズパンツを履いている。
彼の足下には1人の女性が膝を抱え、座っている。彼女はもうじきニという名前になる。
私は、左手に持った説明書を掲げた。
「これはSCM説明書。本来はSCMとともに付属されているものですが、当時は説明書だけで50万円の値が付きました」
1ページ目をめくり、そこに書かれている文章を全員に見せ、読み上げた。
「……あなたの上の歯は、10ありますか?」
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