和泉カナコ ①

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「初めまして、皆様。私の名前はイヅミです。 早速ですが、この月型の金具がスレイブ・コントロール・メソッド、SCMです」 私は額に浮かんだ汗を拭き、そう言った。皆は僅かに口を開け、私に注目している。 ここは新宿区にある、とあるマンションの一室。 3LDKの間取りで、賃貸として借りている。家賃は月16万円。 さきほどまで、この部屋ではけたたましい『キュィーン』という電動音が鳴っていた。 私の目前には9名の人物がいる。働き盛りの男性がほとんどだけれども、女性もいる。 いずれも、今日初めて会ったばかりの人間だ。 私は昨日買ったばかりの、Aラインの冬物のワンピースを着て、手に持った月型の金具を掲げた。 「今から一年半前、ネット上において、SCMは300万円の値が付きました……ご存じの通り、この器具で奴隷が作れます」 私は、隣に立つ男イチを見つめた。 イチには髪、眉をはじめ体毛がない。 今は黒いシャツを着て、黒いジーンズパンツを履いている。 彼の足下には1人の女性が膝を抱え、座っている。彼女はもうじきニという名前になる。 私は、左手に持った説明書を掲げた。 「これはSCM説明書。本来はSCMとともに付属されているものですが、当時は説明書だけで50万円の値が付きました」 1ページ目をめくり、そこに書かれている文章を全員に見せ、読み上げた。 「……あなたの上の歯は、10ありますか?」  
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