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トンボには種族で分かれた環境であって、町や村が設けられる。その地域に別種が紛れると、争いだすのが、アキツハラでは当然のことであった。
アカネ一族は最大勢力のヤンマ一族と戦っていた。残党キクニがアカネ一族の捕虜になった。
「へぇ、女兵士だけの勢力か? 初めてお目にかかる」
キクニが嫌らしくもため口を聞いた。
「しゃべるな!! 下種め」
捕縛者の兵士が絶叫しだした。
「本当のコト……言っただけだがナァ」
餌用人間の番人が不足してるというから、敵捕虜に人間の捕虜を守る仕事の任に就かせた。勿論、それは金の代わりに賄い付きが条件であった。
アキ姫。ここアカネ王殿のプリンセスである。
「アキ姫の謁見である。心せよ」
番人に就く以前に、皇女殿下御前の顔出しが、アカネ領ならではのしきたりだった。
「面を上げよ。そして、その面構えを良く見せたまえ」
アキ姫の冷厳の身体を見れば、どんな人でもひれ伏せるというもの。しかし、キクニがこのような場所でひれ伏すことは、一切無いのであった。
「姫様の御前、その態度は許さぬ。故に、処分する!!」
女兵士の勢気が怒りと共にあふれ出た。
アキ姫は、冷静にそれを止めた。
「サクホお待ちなさい。丸腰の男を狩るのは野蛮でございますよ」
「ひ……姫様、しかし……承知いたしました。攻撃を解除します」
「これより……この男、私の身の回りの世話の任に就かせようぞ」
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