第一翅 翅刀(ハガタナ)

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 トンボには種族で分かれた環境であって、町や村が設けられる。その地域に別種が紛れると、争いだすのが、アキツハラでは当然のことであった。  アカネ一族は最大勢力のヤンマ一族と戦っていた。残党キクニがアカネ一族の捕虜になった。 「へぇ、女兵士だけの勢力か? 初めてお目にかかる」  キクニが嫌らしくもため口を聞いた。 「しゃべるな!! 下種め」  捕縛者の兵士が絶叫しだした。 「本当のコト……言っただけだがナァ」  餌用人間の番人が不足してるというから、敵捕虜に人間の捕虜を守る仕事の任に就かせた。勿論、それは金の代わりに賄い付きが条件であった。  アキ姫。ここアカネ王殿のプリンセスである。 「アキ姫の謁見である。心せよ」  番人に就く以前に、皇女殿下御前の顔出しが、アカネ領ならではのしきたりだった。 「面を上げよ。そして、その面構えを良く見せたまえ」  アキ姫の冷厳の身体を見れば、どんな人でもひれ伏せるというもの。しかし、キクニがこのような場所でひれ伏すことは、一切無いのであった。 「姫様の御前、その態度は許さぬ。故に、処分する!!」  女兵士の勢気が怒りと共にあふれ出た。  アキ姫は、冷静にそれを止めた。 「サクホお待ちなさい。丸腰の男を狩るのは野蛮でございますよ」 「ひ……姫様、しかし……承知いたしました。攻撃を解除します」 「これより……この男、私の身の回りの世話の任に就かせようぞ」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!