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「……っ!!」
悪夢から解き放たれた様に、士は跳ね起きた。
「はぁっ……はぁっ」
服は汗で濡れ、嫌な寒気が背中を撫でる。
慌てて周りを見渡すが、そこは真っ暗でも真っ白でもない、自分のよくよく見知った場所、
---光寫眞館---だった。
……あれは夢、か?
だとするなら、何とも不気味な夢だ。
上に掛けられていた毛布を取り、ソファに横たえていた我が身を起こす。
「あ、やっと起きましたね、士くん」
「ん、夏みかん……」
するとソファの横の椅子で編み物をしていた光夏海が士に声をかける。
「士くん、ずいぶんとうなされてましたけど、大丈夫?」
「…別に、変な夢を見ただけだ、どうという事はない」
と、士は相変わらずの調子でソファに改めて座りこみ、近くで動いていた時計を見る。
---午後5時半か…俺はそんなに長い間寝ていたのか……---
自らの体調に疑問を感じつつ、士は座ったまま周囲に目を動かしていく。
目の前の机に置いてあったのは……愛用しているトイカメラ。
それは昨日から置いたままだったので、さして気にすることはない。
その隣に束に重なっていたのは、ライダーカード。
「………」
特に理由も無いが、何となくカードを手に取り、その絵柄を眺めてみる。
それと同時にあの言葉が、
---始まりを告げる賽は投げられたのだよ…---
夢で聞いたあの言葉が再び脳裏で再生される。
あの不気味な声色を忘れようとしても焼き付いたかのように忘れられない。
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