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ここまで来て嘘をつくなんて出来ない。
「紫音先輩が……ゲイだって事とか……ついさっき聞きました」
紫音の表情が固まる。
感情の起伏が消えた顔で、視線は虚空を映す。
「……僕が……ゲイだから、モノは試しに……告ってみようって…?」
皮肉めいた言葉の奥に、傷付いた心が見えるんだ。
傷付けたい訳じゃないし、だからって嘘で誤魔化したくない。
上手い言葉で表現する語彙力なんてないし、テンパってる頭で考え付かない。
俺に出来るのは、ただひたすら正直な気持ちを伝える事だけだ。
「本当は、告白するつもりじゃありませんでした」
紫音が、外界から遮断された繭の中に閉じ籠る前に、まだ伝えたい事があるんだ。
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