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五月中旬。桜並木に咲き誇るピンクの花びらはヒラヒラと舞い降りた。
道は桜の花びらでピンクに染まり、見事な花化粧で仕上がった道が出来上がる。
その桜の道を歩く人影が二人。未来と桜が一緒に歩く姿だった。
「綺麗な桜吹雪だな。桜もそう思うだろ?」
「うん……。綺麗だね」
問い掛ける未来に桜はそう返した。しかしどこかその表情は浮かない。
そんな桜を見て未来は気分が悪いのかと思い声を掛けた。
「どうした桜? 気分でも悪いのか?」
しかし、桜は首を横に振る。
「それじゃ俺と二人きりで出掛けるのが嫌だったか? まぁ知り合ってまだ間もないから仕方ないか……」
「ううん。そんなことない。未来君と二人で出掛けるのは嬉しいよ」
二人きりで遊ぶのは嫌いじゃない。むしろ嬉しいと言ってくれた。
なら何が彼女を不満にさせているのだろう? 未来はそう思った。
「なら何でそんな浮かない顔してるんだ? 悩みがあるなら相談に乗るぞ?」
「ありがとう。でも大丈夫。私には不満なんかないから。でも強いて言うなら……」
桜はそう言うと宙に舞う桜の花びらを見た。何かを悲しんでるような瞳で。
「この桜かな……」
そして桜の口から出た一言。桜の気落ちしている原因。それはこの綺麗な桜のことだった。
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