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部屋に入り、机の一番下の引き出しを開ける。
その引き出しの一番奥にある写真と、同じ写真が入った写真立てを取り出した。
捨てないで良かった……。
写真立ては机の上に置き、もうひとつの写真を持って階段を駆け下りる。
玄関のドアを開け慌てて家の外に出ると、結城くんは少し驚いた後、笑った。
「そんな急がなくても、どこも行かないって」
そんなはずないのに、心のどこかで、早くしないと結城くんは帰っちゃうんじゃないかと思った。
だから、そう言ってくれたことがすごく嬉しくて……。
確かに結城くんは、ここにいる。
ここにいて、今はわたしだけを見てくれている。
「なに持ってきたの?」
まるで小さな子に話しかけるような優しい言い方で、結城くんはわたしの手に持っているものを見た。
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