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弟が死んだ季節。
とても暑い日に彼は亡くなった。
「それで池を見ながらさ。 そろそろ暑くなるなぁって思ってたわけ」
「それで?」
「スゴイ不謹慎だよ。 この子さ、叫び声あげながら空から落ちてきたの」
苦笑しながらアイナは事実のみを淡々と話す。
吹っ切れているように見えて、弟の死を乗り越えられていないことは手に取るようにわかった。
「空から?」
「うん、空から。 すぐに助けて教会で治療して、しかもこの子起きるのに二日かかって」
「ちょっと待て。 空から降ってきたこいつが、人を探してるんだな?」
とても奇妙な顔をしたマスターは、町の情報屋よろしく恐る恐る話し始めた。
こんな不思議過ぎることがあってはならない。
しかし辻褄は合っていると付け加える。
「二日前、空から落ちてきたってヤツを雇った男が飲みにきた」
すでに寝てしまったハルミの代わりに、アイナはニッコリと笑って三杯目のビールを頼んだのだった。
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