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「戦えないヤツはなぁ……どこかで雇われてるんじゃないか?」
困った顔をしながらマスターは追加のビールを手渡して話した。
「なるほどね。 ありがと!」
「ところで連れの兄ちゃん、大丈夫か?」
アイナの見ていないところで、ハルミは頭をふらふらさせながらビールを飲み干した。
もうすでに顔は真っ赤になっており、見てわかるほどに彼は酔っている。
「あちゃあ、こんなに弱かったのね」
「アイナさん! 俺は魔法使いになりたいんですよ!」
「うんうん、知ってるよ」
意外にも煙たがる様子はなく、アイナは笑顔でハルミの話を聞き始めた。
酔っ払いの介抱など面倒くさいことこの上ないが、それでもアイナはきちんとそれをこなしている。
「ずいぶん手慣れてるな」
「うん、弟も弱かったから」
そう言ってアイナは二杯目のビールを空にするも、三杯目を頼もうとはしない。
小綺麗な店内でもない、ハルミでもない、どこか遠い所を見ているような目だ。
「私、夏が嫌いなんだよね」
どうやらアイナも少しばかり酔っているらしく、感慨深げに語り始めた。
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