20137人が本棚に入れています
本棚に追加
/900ページ
その後、ハルミは千鳥足で酒場を出てすぐに寝付いてしまったらしい。
気が付いたらすでに明け方で、空は若干の明るみを見せている。
別のベッドでまだアイナは寝ている、部屋は二人部屋に変えたようだ。
「記憶が曖昧だけど」
弟のことを考えていたら空から年下の男の子が落ちてきて、その男の子は今にも死にそうな重症を負っている。
しかもそいつは見ず知らずの人間と同じ部屋で無警戒に寝ているのだ。
「明らかに俺と重ねて見てるよなぁ」
出会い方が良過ぎて、悪過ぎた。
こんなことは英雄譚でも出てこない、あり得ない話。
「……襲いかかっちゃうぞ」
ボソッと口に出してみたものの、その言葉は虚しくも鳥のさえずりよりも小さい。
朝が早い商人たちの活気ある声に掻き消されてしまう。
「わかってるよ。 そんな勇気ないよ」
ハルミは悶々としながら再びベッドの中へと潜り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!