ジュウロク

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 震える程ぐっと拳を握り締めている。  やっぱり普通の人達は簡単に認める事なんて出来ないんだろう。アタシ達の存在を。 「リリちゃんも、師匠も……そうなんすか?」 「そうだよ」  あっけらかんとリリちゃんは言う。気にしてないと言うより、隠したくない、そう言う感じで。 「引くよね?」 「そりゃ……引くっす、けど……。でも」  アシュ君がリリちゃんを気遣うように寄り添って、遠慮がちに肩を抱いてる。普段ガサツな彼ですら落ち込んだ空気を察したみたい。 「リコちゃんが隠してたのよりもっとおっきな隠し事、リリはしてたんだから。仕方ないよ」 「うっ……」  オロオロとリコちゃんがアシュ君を見やると頭を掻いて。 「もう隠すこともねぇな。俺はマスターを補佐するサポートモンスターだ。ダンジョン運営の中核を担う役割を持ってる」 「えっ?フォっくんが殆どやってくれてるよ?」 「マスタぁ~、ややこしくなるんでここはそうしておいて下さいよ!で、クラスは死皇帝」 「しっ!死皇帝っ!?最上位クラスのモンスターじゃないですか!」 「だから、俺様は近接戦闘も強いんだぜ?ネクロマンサーと違ってな」 「補助系はぜんぜんだけどね~~。いっつも飛翔魔法でたんこぶ作ってたよね~アシュくん」 「マスタぁ~~っ!?」 「もぉ~っ!だからリリだって言ってるじゃん!アシュ君のバーカっ!」  で、いつもの夫婦漫才を繰り広げリコちゃんを唖然とさせてるわ。 「リリちゃんは、ダンジョンマスターで……師匠は、死皇帝……」  お揃いの耳飾りを握りながら、掠れ声で呟く様は彼女の深い混乱と、絶望が滲んでいる。 「だから、忘れてくれていいよ?誰にも言わないでくれたらそれでもいいケド、多分忘れちゃった方が楽だよ?水神様の加護?貰ったらその耳飾りも要らなくなるよね、リリ結構気に入ってるから貰っとくね」  手を差し出すリリちゃんはいつもの無邪気な笑顔じゃなくて、ちょっと心が苦しくなる。 「…………嫌っす」 「ずっと隠して、しまっておくの辛いよ?」 「そんなの知ってる……私だって、ずっと隠してた。せっかく知ってくれたのに、解ってくれたのに!あんなにお話したのにっ!!友達に……なれたのに……。忘れろなんて酷いよ……リリちゃん」  多分、これが彼女の本当。喋り方も想ってる事も。耳飾りをつけたまま、リリちゃんの方に歩いていって肩を掴んで、顔ぐちゃぐちゃにして……泣いた。 「もぉ~……泣くことないじゃん……」  って、リリちゃんもギュッとリコちゃんの肩抱いて号泣ですよ。あ、らめ、目から汗スゴい。止まんない。  すんっ、ズビッ……ぐずっ。 「クソマスっ!何でテメェまで一緒になって泣いてやがる!?」 「ユーの涙はミーの涙。涙ってワードだけでアタシもう、泣くからっ!」 「泣くから、じゃねぇクソがっ!!ズビッ!」 「泣き夫と書いてロウエンと読むのよオワカリィズビィイイッ!!」 「知るかクソがあぁああっ!!」
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