10 陽炎

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泣く、反撃、無視。  とっさに3パターンの選択肢が頭に浮かんだけれど。 まず泣くなんて言語道断、断固却下の問題外!第一あたしのプライドが許さない。とはいえ残念ながら、これといった反撃方法も浮かんでこないシビアな状況下。闇雲にやり返すのも賢明な判断とは思えない。 消去法でいったら、もう選択肢はラストひとつしかないじゃない? 不幸中の幸い、ほぼ掃除は終わっているし。そうと決めたら実行あるのみ。ダッシュで自分の道具を片付け、逃げるように離れようとしたところを目ざとくユウに見つけられた。 「ずるーい。逃げるんだ」 後で考えたら聞こえないふりすれば良かったのに、思わず振り返ったあたしの口から言葉がこぼれた。 「怜に言いつけてやる!」 その瞬間。後ろから襟首を掴まれ腕をひねりあげられて、もの凄い剣幕でユウが脅しをかけてきた。 「クソ女。殺すよ」 「痛っ……!」  「怜さんに言ったら、こんなもんじゃすまないから。身体中の骨を叩き折ってやる」 あたしを睨みつける憎しみに満ちた目つきも口調も、数々の修羅場をくぐりぬけてきたかのような凄みと迫力に満ちていて。 さすが怜に憧れてるだけあって、物騒な言葉を好むよね!って内心ひそかにつっこみながらも。 「離して」 心の声とは裏腹に、あたしの声は自分でもびっくりするくらい弱々しくて小さかった。
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