真夜中の射手

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生きてりゃ色んな事がある そりゃそうだ、誰しもたまにはレアな体験なんかもするだろう それが良い事か悪い事か、区別しなければ単に稀少な体験として思い出になり、退屈な日々に埋もれてしまう だが今日、真夜中に起きたレアな体験はその繰り返される退屈な毎日自体を変化させてしまった 「伏せてッ!!」 薄青い街灯の仄かな輪から僅かに外れて立つ目の前の女が俺に向かい叫び、極限まで張っただろう弓を構え矢を引き絞る 硬直した体と頭ですぐに彼女の言葉に反応など出来ず、その場で突っ立ったままだったが代わりにお菓子とコーラが入ったコンビニの袋がドサッと地に伏せた 「ちょっと!!聞いてるの君!!」 「は?……えぇ!!何!!何で!!おおお俺ぇ!!金は無ぇぞ!!」 薄く黒い長袖のブラウス、胸元に連なるターコイズの様な青いボタン、腰周りに数本の細いベルト代わりのシルバーの鎖 黒縁眼鏡にお尻の上まである黒髪、キツい目つき、ハッキリ言ってストライクだが金を貢ぐつもりは無い 俺に金を払う意思が無いと知るや女は無情にも矢を放った 「オワァアアアア!!お巡りさん!!助けて下さい!!」 「退いて!!……逃がさないわよ!!八重(やえ)ちゃん!!360秒短縮で一気に仕留める!!お願い!!」 女は少し痛いのか独り言を叫び、俺は貧乏をアピールをする為に出して開いた財布を放り投げ横っ飛び 彼女の弓に数本束になった矢がつがえてあり、私、人とか全然撃ちますけど!!という目をしていたからだ
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