「それも持って行くよ」

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「また読むんですか?」 「なんせ時間があるからね。 それに名作は何度読んでも面白いから……」 そう言いながら私を見上げたマスターは、直後吹き出した。 「ちょっ… なんですか、急に…」 抗議する私に、マスターは尚も肩を震わせながら答える。 「だって…納得行かないって顔してるから…。 そんなに可笑しい?」 私は恥ずかしさを誤魔化すため、ふいと視線を横に逸らした。 「………推理小説なのに、犯人が分かってからまた読んでも、面白いのかなって、思うんですもん…」 語尾が思いの外駄々をこねる子供のような響きになってしまい、より一層恥ずかしさが増す。 そんな私の様子が可笑しいのか、なかなか笑いが引っ込まないマスター。 目尻に涙まで浮かべる始末。 前回ここに来たときの事がまるで嘘だったかのようだ。 「ごめんごめん。 確かにそう思う人は少なくないと思うけどね。 でもさっき言ったように名作はさ、全て真相が分かった後から読み返してみると、ああこのセリフはこういう心情から来てたんだなとか、この記述はこういう状況をギリギリのところで説明していたんだなとか、作者の意図が分かるようになって、パズルを解くみたいで楽しいんだよ。 このくだりは読者をミスリードしてるなって言うのが分かったりして、それかすごく気持ちいいんだ」 珍しく口調に熱の入るマスター。
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