序章

2/3
/142ページ
私立楓ヶ坂(ふうがざか)学園は、一見何処にでもある中高一貫の学校だ。 都心からは電車で約1時間半、いわゆる郊外にあり、田舎でもないが都会でもない街のや更に外れにあり、交通は不便と言って差し支えない。 しかし、生活に不便を感じる生徒はさほど多くは居ない。 ごく一部の限られた生徒を除いて、通っている生徒のほとんどが、寮生活をしているからだ。 驚いたことに、この辺境の学園には、全国各地から生徒が集まっていた。 教育方針故か、授業の質の高さ故か、各分野で活躍している卒業生を多く輩出しており、全国の良家や資産家の子息子女の入学希望者が多いのだ。 卒業生の活躍の場は、政財界、医療分野、芸術方面に留まらず多岐に渡る。 身近な、分かりやすい最近の例で挙げると、そうそう、今や全国各地のデパートに必ずと言っていいほどテナントで入っていて、本店を東京の自由ヶ丘に構える有名洋菓子店『風雅堂』の創業者も、この学園出身(そしてお察しの通りその屋号はこの学園の前をなだらかに伸びる『楓ヶ坂』に因んだものだ)。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!