月と太陽

5/64
/142ページ
第一相談室、第二相談室… 入口上部に突き出している札の下に、更にプレートがぶら下がっている。 各部屋毎に相談内容のカテゴリーを説明したものだ。 『学業(一般)』、『学業(受験)』、『学業(その他)』などから始まり(正確にはもっと細分化されているのだが、面倒なので読み飛ばした)、学校生活や部活動など様々な悩みに対する相談室がある。 ここに足を踏み入れるのは初めてだ。 入学式後のオリエンテーションの時、学園長の談話の中で軽い説明を受けている。 『中高一貫、しかもほぼ全寮制、目標を掲げてこの場で学ぶ生徒の皆さんは、やがて様々な悩みに直面することでしょう。 その中には、普段生活を共にしている同級生や教師には、打ち明けづらい事もきっと少なからずあるはずです。 その為我が校には、第三者機関から派遣された相談員の方々が多数いらっしゃいます。 困った事があったら何でも、学校の中の事、外の事関係なく、気兼ね無く相談棟を訪ねてみて下さい。 必ずや、あなたの悩みに応えてくれる方がいらっしゃることでしょう』 確かに生徒数は多いものの、来るか来ないか分からない生徒の為に、教師でもない多数の人間を雇って常駐させるというのは、いかな名門校であっても少々大袈裟な話だ。 初めて聞いた時はそう思った。 しかしいざ学園生活が始まってみると、クラスメイト達から、ちらほらと『相談棟に行って悩みが解決した』という話を聞くようになった。結構な頻度で。 あながち無駄では無いのか、と考えを改める一方で、自分には関係ない、と思っていた。 夏の終わりまでは。 この夏の出来事。 気休めだとは分かってる。 相談したって解決するわけでは無い事も。 一体、どこに相談したらいいんだろう…。 相談内容のプレートをひとつひとつ見送りながら、廊下を奥へ奥へと進んで行った。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!