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「ちょ、ちょっと待ってください」
と、何度も伝えた。
しかしその度に「大丈夫です」「お任せください」と言われるばかり。
あっという間にドレスを着せられ、あっという間に髪をセットアップされ、
「……!」
鏡の中にいるのは、まるでディ○ニープリンセスのよう。
黄色いドレスだからか、本が好きで野獣と出逢うあのプリンセス……。
「こちらへどうぞ」
唖然としている私を余所に、満足げに微笑む女性が、入ってきたとは違うドアを押し開けた。
「……麻友ちゃん……!?」
そこには、タキシードを着せられた風夜くんがいて、シックな青緑のチェック柄。
その色を着こなせるのは風夜くんしかいないと断言できるほどのハイセンス。
ハットまで被っていて、オシャレの極みでしかない。
「風夜くん、これはいったい……!?」
「ちょっと僕もよく分からない……! つーに連絡しても全くでないし」
「りかのドレスは準備されてたよ!? てことは、どういうこと? これから来るのかな? この姿ではケーキなんて作れないよね……?」
「あの……ケーキを作るように頼まれていたんですが……」
「こちら、お手紙でございます」
こちらがどんなに訴えても笑顔を崩さない女性が、一通の手紙を差し出した。
風夜くんと顔を合わせ、おずおずと封を開ける。
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