巨空

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ

巨空

構造という愛に、命は宿る。 尊さはその限りの中にこそ。 唯一の景色とその音色。 そして、手の届かない与奪。 何が俺たちを満たすのだろう。 どれだけの存在がこの世界には・・・ 僅かな恩恵でここに立ち、 そして、手を伸ばす。 視界に映る小さな世界に。 飛び交う鳥に近づけば、逃げていく。 もう、そこでは言葉など意味をなさない。 どんな旗の下でも、どんな思想の中でも、 理解しきれない程の情報が俺たちを形作る。 確率はなく情報が、決められた運命のように。 まるで見えない場所だからこそ、巨空よ。 いつか全てを常に知るときが来て、 何もかもを自由に出来たとしたら、 人は、心はそこにあるのだろうか。 今の文明の名残など一欠けらも。 飛び立つ鳥の行き先さえ、分かっている。 もう、そこには恐れなど一欠けらも無い。 固定化された言葉が、終わらない人生が、 想像も出来ない世界がそこには広がっているのだろう。 確率はなく情報が、決められた規則のように。 だけど、今は。 笑い合う世界を夢見れば、逃げていく。 もう、ここには理想など意味をもたない。 どんな人種に生まれ、どんな教育の後も、 知る限りの情報で俺たちは思想を形作る。 真実か虚偽なのか、知る由も無いままに。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!