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「……困ったわ。」
青白い満月が映える夜空の下で、七色に光るワンピースを身に纏った色素の薄い女性が呟いた。
「ガイドブックの通り、インドの男は絶倫でテクニシャンだったけど……まさか、神である私が妊娠するなんて、思わなかったわ。」
そう。
彼女は“天空”から来た神の一人だ。
規則でがんじからめで自由の少ない窮屈な“天空”では、時折刺激を求めて地上へ降りる神が後を絶たない。
なぜか“天空”の神々は生殖能力が低い。
そのため彼女は地上へ快楽を求めてやってきて、寺院の聖娼(神に仕える娼婦)に混じってあらゆる男達と散々楽しんでいた。
地上の猿の子供を“天空”へ連れて帰ったら笑い物にされてしまう。それが彼女の悩みのタネである。
かと言って野蛮な地上で中絶する勇気はなく、ましてや地上で子供を産み育てる気も全くない。
悩んでいる間に彼女のお腹の子供は育ち、臨月を間近に控えていた。
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