序章

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表と裏があるように、光と闇が存在するように、善と悪が人の胸の中にあるように、世の中は全て対(つい)となっている。 人間も、それは同じであり、人は元来分かち合うことなどできない生き物だ。 目的が異なれば、同じ力でも反発することは必然で、それらがぶつかり合うのは当然のことだろう。 ある日突然、世の中の常識を超越した『力』を持った者達の目的が、一つは守護することで、一つは支配することだったとするならば、そこには反発が生まれ、そして戦闘が起こる。 暗がりに三人の人間が立っていた。 彼等は、街を歩く人々を傍観しながら、薄い唇を小さい笑みへと変える。 『何も持たない者達』に、今こそ制裁を。 一人がそう言って、手の平から赤黒い光を街中へ向かい発すると、街は一瞬の内にして、火の海に包まれた。 「さぁ、準備は整った。始めるとしよう」 闇から聞こえたその声に、もう一つの力を持つ者達が気付いたのは、少しあとの話だった。
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