357人が本棚に入れています
本棚に追加
/229ページ
「私の中には貴族とヴァイキング、2つの血が流れている」
「なんか選ばれし者みたいだな……」
目の前にいるフェリシアさんは俺と同い年の女の子なのに、遥か遠くを歩いているように感じた。
「そんな血統を有するフレイヴァルツ家に生まれた私は幸福者だ」
嬉しそうにニッコリと微笑んでくる。
そしてそのままの笑顔で「だから……」と付け加えて再び口を開いた。
「だから私はフレイヴァルツ家の名に恥じない人物になろうと思ったんだ。お嬢様としてチヤホヤされるんじゃなく、誇り高く勇ましかったご先祖様のように、な」
まぁお嬢様の全てがチヤホヤされるわけじゃないけどな、と付け加える。
俺のお嬢様のイメージも『まわりに従者を従えた箱入り娘』みたいな感じだし、そんな風に見られたくなかったのだろう。
自分の家系のために強く勇ましく生きる。
口では簡単に言えるが実行することは難しい……というか並大抵の努力じゃ達成できないことだと思う。
それを目の前の女の子……俺の肩ほどまでしかない身長の、同年代の子がやり遂げようとしている。
そんな彼女を素直に応援したいと思えた。
「しかしそんな私をよく思わない人もいてな……学校でも家で開くパーティーでも心無いことを言われることがあった」
「なにも知らない奴らが口出ししていい問題じゃねぇのに……気に食わねぇな……」
少し寂しそうに眉を下げるフェリシアさんを見ていると、なにかムカムカするような気持ちが沸き上がってきた。
こんな立派な志を持ってる人間が、なにも知らない人間に冷罵されて傷つけられている。
それを知るだけで胸のムカムカがさらに増したように感じた。
『フェリシアさんに負けてほしくない』
俺は自分の怒りの根元にある1つの気持ちを改めて確認した。
最初のコメントを投稿しよう!