第2話:孝服(コウフク)

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「何かごめんね。 普段なら学校行ってる時間なのに、 瑠樹の言う事なんて半分聞いてりゃ いいんだよ」 「いえ、僕も好きでやってますから」 「それよりさ、大丈夫なの? 学校に行かなくて」 「大丈夫です、今日休みなんで」 「それならいいけど……、 休みならデートの約束があっても 困るし、早めに歩きたいんだけど、 どうも足が言うこと聞かなくて……」 「ゆっくりでいいですって。 僕、彼女いないんで」 「隠さなくていいよ。 それだけ顔が良いんだから 彼女の一人や二人」 「だと良いんですけど、 キャンパスでもモテないんですよね~」 「こんなイケメンほっとくとか、 みんな頭おかしいんじゃないの?」 「いやいや、それはないですって」 美羽さんはしきりに僕の心配をして くれているが、ヒールが高すぎたのか 店の階段からすでにフラフラしていて むしろ美羽さんの方が危なっかしい。 「もし良かったら 新しい靴買いに行きませんか?」 「へ?なんで?」 「どう見ても足に合ってないですよね」 「そんな事ないよ。 瑠樹から貰った物は大事にしないと バチが当たりそうで怖いし」 本当は僕が送ったものなんです。 とは、今さら言えない。 「まぁ、確かに、ここまで高いのは 久しぶりだから履き方忘れたかも しれないけどね」 「なら、僕の腕掴みます?」 じゃないと、瑠樹さんが言った通り 高い確率で転けそうだ。 「いや、いい。 こんなおばさんと噂になっても 大地君に迷惑かけるだけだし」 分かっていた。 そう言われるって分かっていた筈 なのに、実際聞いてみれば自分が 思っていたよりも胸を深く刺し、 気づけば少し強めに手を掴んで 引き留め、視線を外さずに告げた。 「僕は気にしません」 「いや……でもさすがに!!!」 どうやってバランスを崩したのか 分からないが、空いた腕をぐるぐる 回して後ろに倒れそうだったので 腰を抱いて引き寄せた。 「まったく気を付けてくださいよ」 「ごめん」 昔と変わらず天然さんだ。 そのナリはまるで抱き締めている みたいで少しだけ幸せに浸る。 「えっ、と、もういいよ。 ありがとう」 「そんな事より足大丈夫ですか?」 「うん、捻ってはないみたい」 「おい、何やってんだ。 いちゃつくなら他でやれ」
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