kiss 17 [Moon Crying]後半

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☆☆☆ 赤い鉄塔が聳え立つ此処にやって来るのは、2度目となる。 そして、今回も彼のほうが先だった。 だが、前と異なるのは彼との関係だけじゃなくって、 「やあ」 柔らかな笑顔で微笑む成宮氏。 その笑顔は何処かホッとさせられて、 以前感じていた、射抜かれる視線に臆することは、この先無いのかもしれない。 「この前と同じメニューでいいかな?」 黒革が貼られたメニューを持ってきたウェイターを待たせて、彼が笑顔で尋ねる。 「ええ、お任せします」 その笑顔に負けないぐらいのスマイルを見せた。 藍色のゴフレットに注がれる透き通る水は、深い海の底に思える。 その中に生息する生命を想像しながら、一口含んだ。 喉が渇いている。 彼に会うことを緊張したと言うより、 成宮氏と女友達としての会話をどう楽しめばいいのか、 言葉のやり取りについて、約束をした日から頭を悩ませていた。 小栗とみたいな、くだらない内容を話すわけにも行かないし...。 恋人同士の甘い囁きのほうが、 異色な場所にいる友人関係の会話より、ずっと簡単な気がしてならない。 「乾杯」 フルートグラスの中で気泡が優雅に踊る。 黄金の液体で充分に喉を潤した後、成宮氏は目尻を下げて、私に笑いかけた。
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