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実の両親に無邪気に笑いかけていたあの頃か。
二人の親友と遊び回っていたあの頃か。
東の国を旅して回っていたあの頃か。
“月の光”に拾われ、仲間ができたあの頃か。
学園に通い友人たちと笑いあったあの頃か。
それとも、自由に世界を歩き回れる今か。
幸せが何かわからない。しかし、気が狂いそうな出来事があっても、その後に訪れた僅かな安泰には、いつも小さな幸せがあったことはたしかだった。
「……母は、いつでも帰ってきて良いと言ったのです。……あの家に僕の居場所は……」
小さな庭付きの一軒家。新築に見えるが改装して売り出されていたのを買い取ったのだと、父は言っていた。
壁に飾られていたのは、弟が木板に描いた幼い絵。そして家族で撮りに行ったのだろう一枚の写真。
そこにリューティスの想い出はない。それはリューティスが家族でなくなってから紡がれた時間の跡だった。
居間に置かれた四つ目の椅子が、辛かった。リューティスの居場所はあるようでなかった。あの椅子に座るのはリューティスでなくとも、他の誰かでもいいのだ。
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