夜の帳が下りる町 1

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「錦さんて、警察のかた?」 突然白虎はクスクスと笑い始めた。 錦はもちろん、千里にとってもそれはなかなか見ない光景で、呆気にとられてしまう。 「だって、敬礼とか咄嗟(とっさ)に出ないでしょ」 なおも笑っている白虎に、その場は少し和やかになった。 その後、馬車の用意が出来たと団員が報告に来て、一同はそちらに移動した。 それと同時に、集まっていた団員達(ギャラリー)も散り散りになり、白虎は漸くホッとため息をついた。 やはり、大人数の真ん中にいるのは気疲れするらしい。 用意されていたのは、二頭立ての四輪馬車。そこへ、千里、白虎が横並びに、錦が向かい合うように乗り込んだ。 錦の緊張も、先程よりやや落ち着いてきているように見える。 「では、私はギルドを離れられないのでここで。 拓真、しっかり補佐して来るんだぞ」 「はい、久遠さん! 任せて下さい!」 まるで大きい兄貴と弟のようで、微笑ましい。晴れやかに見送られて、三人はコハルドを後にした。
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