ノスタルジアから

3/12
4890人が本棚に入れています
本棚に追加
/580ページ
『はいはあい。ギルド“ノスタルジア”です』 数回のコール音の後、どこか気の抜けたような話し方の女性が応答する。 少年はその喋りに一瞬だけ顔を顰めるが、直ぐに表情を戻して話しを切り出した。 「絢音さん、俺です。任務完了しました」 『俺俺詐欺なら間に合ってるわ。 出直しなさ「瑞稀です!」 電話の相手……絢音が受話器を置こうとしたのが目に見えて、瑞稀は慌てて名乗る事によりそれを制した。 「任務、完了しました」 そしてもう一度確かめるように言う。 小さな町の片隅にあるギルド“ノスタルジア”。 政府には属しておらず、危険な魔物の討伐依頼や、政府の対応しきれない“こぼれ依頼”を請け負う。 今回の依頼は“こぼれ依頼”だ。 瑞稀は辺りを見渡し、もう一度指をパチンと鳴らした。 今度は、身体のあちこちに付着していた返り血が蒸発するように消えた。
/580ページ

最初のコメントを投稿しよう!