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「あの子も観光客だろ？
知り合いがお前だけで、心細いと思ってな。…見舞いにでも、と思ったんだが。」
そこまで言って、顔を上げた瞬間。ヤバいと思った。
…港が泣きそうな顔をしている。
「…港？」
無言の港に抱きしめられる。…声を殺して泣く港の背中を撫でた。
…様子がいつもと違う。
俺を抱きしめる震える手。港を泣かせたくなくて、原因がよくわからなくて…。
なんだか。不安な気持ちで、港の背中に手を回した。
「どうしたんだよ？港。」
「…っ、会長。…お見舞、行っちゃヤダっ。」
…その言葉を聞いた瞬間、悟った。
…港は何か問題を抱えて、不安になっている。
そして、それを俺に隠している。
…意図はわからないけど、港のコトだから無意味なコトはしていない。
それに、他人の事で感情的になっても、自分の事では取り乱したりしない港が、取り乱してる。
…こんなのは、初めてだ。
「…お前がそう言うなら、俺は行かない。だから、港…っ。泣き止め。」
「…本当？」
「本当だ。」
「…良かっ、た。」
…そう言って、俺は脱力したように気を失った港の身体を支えた。
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