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「会長?もし、良かったらだけど…。俺と、冬休みにもう一度此処に…っ。」
…俯いた加藤が言い終わらないうちに、俺の肩が誰かに捕まれて。
…加藤の顔色が、みるみるうちに変わってゆくのが分かった。
「…え?」
…不思議に思い、急いで振り返ろうとした瞬間。両手を肩に回される。
鼻腔をくすぐるような、シトラス系のデオドラントには覚えがあった。
「ねー、会計君?それ、もちろん俺も混ぜてくれるよね?…会計君の自費で。」
「ひっ、…。」
加藤の怯え方がハンパない気がするんだが、気のせいか…?
「…それより、お前は。言うことがあんだろーが?港。」
…動かない首を無理やり動かしてソイツを見る。
「んー、会長。いい匂い。」
「…キモイ。」
…首筋をスンスンし始めたソイツを振り払って、向き直った。
「ただいま。…会長。」
「お帰り、港。」
なんだ、簡単じゃねーか。
…港の顔を見て声を聞いたら、何もかもどーでもよくなっちまった。
あぁ、俺って単純。
「昨日、放置でごめんねー?家に帰るように説得してたら、海が倒れちゃって。」
「倒れた?大丈夫なのか?」
…倒れた時の港の姿が頭をよぎって。なんだか、不安になる。
「身体が弱い子なんだ。だから、俺も強く出れなくて。…ワガママ放題に育てちゃったから、なかなか言うこと聞いてくれなくてさ。一応、一番近くの総合病院に運んだけど。」
「心配だな。病院は近くなのか?」
「………会長?」
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