プロローグ

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今から大体二年前、中学二年生のゴールデンウイーク。俺は幼なじみの海佳を昔よく一緒に遊んでいた公園に呼び出し、勇気を振り絞って告白をした。 見事付き合うことになって幸福感に包まれていた夕暮れ時。しかし、帰り道の道中で、俺らは交通事故に巻き込まれてしまう。 咄嗟に海佳を庇った俺はトラックに激突され、弾き飛ばされた先の煉瓦造りの花壇の角に頭を打ち付けた海佳は脳幹を含む全ての脳の機能が停止。全脳死となった。 俺の方も体中至る所に大怪我を負い、死の瀬戸際をさ迷っていた。。 普通なら助かる見込みのない俺を、しかし担当した坪野医師は見捨てなかった。 比較的外傷の少なかった海佳。活動の停止した彼女の脳を摘出し、代わりに俺の脳を移植したのだ。 前代未聞の大手術は成功し、俺はこうして今を生きている。 勿論、それで万事解決となったわけではない。むしろ、その結果様々な問題が浮上した。俺と海佳、お互いの家族の間で問題も生じたし、詳しくはないが、医学会やら何やらともいざこざがあったらしい。そして何より、身勝手な決断で海佳を殺した坪野を当時の俺は口汚く罵り、問い詰めた。 何故だ。人口呼吸器があれば海佳は生きていけるような、まだ死んでいない状態だったのに。どうして、もうじき死ぬような俺を生かす為に海佳を殺したのか、と。
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