親戚の家

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親戚の家

この村も随分久しぶりになるな。 駅周辺や街道沿いは少し変わったけど、少し行くと昔ながらの農村に変わりはない。 そう、たしかこの金物屋を右に折れてしばらくいくと… あった、お稲荷様。 小さいなりに祠への参道もありその入り口には狐と狛犬が鎮座している。 別に信仰に厚いわけじゃないが久しぶりなので挨拶がてらお参りしておくか こういう処はどうお参りするんだったか… 二礼二拍手? まあ、それでいいだろ。  パンパン このお稲荷様の裏をしばらく行くととうもろこし畑があったはずだ。 しかし大学生の夏休みは長い。バイトもやっていたが、そのバイト先も夏休みだということで、4ヶ月遅れの進学祝いのお礼を兼ねて親戚の家に遊びにいくところだ。 それにしても、こうセミがうるさいと余計に暑苦しくなってまいるなあ。 ここは母方の叔母さんの家があるところ。以前来たのは小学3年生の夏、両親に連れられて来た。 その時父は3日目に1度帰ったが、僕と母は次に父が迎えに来る2週間後までお世話になった。 叔母さんの家には今子供はいない。 だからしばらくはひとりで遊ぶ事が多かった。 ひとりで遊んでもあまり面白くないけど、ここは知らない土地。 別に山や森に入らなくても歩いているだけで新しい発見がある。 つまり、毎日が冒険だった。 ほとんどが田んぼや畑で、その途中に民家などの建物が点在している。 車の通らないそんな道を好んで歩いた。 いろんな草花や昆虫、たまにトカゲやヘビも見た。 小川というよりは用水路なのだが、そこではカエルやアメンボが僕を出迎えてくれた。 ときには知らない家の犬に吠えられたり。 そういったことも少なくなかったけど、でもほとんどはただ暇で退屈な時間だった。 だから何かを探していつも外で遊んでた。
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