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向日葵の女の子
その日もいつもと同じように歩いて、とうもろこし畑の脇を歩いていたとき、何かが右奥でキラッと光った。
なんだろうと思いとうもろこし畑の畦道に入り、光ったと思う場所の近くに行ってみた。
光ったのはガラスビンの欠片だったが、その10mくらい向こうに…
女の子だ。
僕と同じくらいの。
少し日焼けしたその子は麦わら帽子をかぶり、白いワンピースにピンクのサンダル。
なにより自分より背の高い、大きなヒマワリを抱えていた。
その子が、立ち尽くす僕を見つけて、目があった。
お互いに目をあわせ、立ち尽くしていた。
10秒程だろうか、いや、本当はもっと短かったかもしれないが、感覚的には30秒以上はあった。
その緊張を破ったのは女の子の方だった。
不意にニッコリと笑ってこう言った。
「ねえ、
このヒマワリ、スゴいでしょ。」
確かに、その女の子の背丈より高いヒマワリに、顔の倍くらいはある花が見事に咲いていた。
でも僕はそれ以上にその女の子の自分に向けられている満面の笑顔がとても眩しくって目を奪われていた。
僕は無意識のうちに小走りで近寄った。
「スゴい、大きいね。」
女の子はさらに顔をくしゃっとして笑い、
「でしょ、あたしヒマワリ大好きなの。」
と言った。
とうもろこし畑は大人でも届かないくらいの高い壁を作り、僕達の他は誰もいない、ジリジリと照りつける太陽が見ているだけの世界の中にいた。
「ねえ、ちょっと、
こっちこっち…あ、そうだ。
ねえ、君何ていうの?
僕、ようた8歳…3年生。
君は?」
「あたしも3年生、ひな。
太陽の陽に菜っ葉の菜で陽菜。」
「うそ、おんなじだ。
僕、太陽をひっくり返して陽太。」
「ようた君、太陽なんだ。」
「ひな…ちゃん、
ひなちゃんは、太陽の菜っ葉だからヒマワリだね。」
「えへっ、ヒマワリみたいに大きくなるかなあ。」
「なるといいね。
ねえ、ひなちゃん、あっちいこ。」
僕達はすぐ仲良くなり、畑の中ではしゃいだり、一緒に虫を見たりした。
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