- 3章 -

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 さっきまで注目していた、2階のドリームカンパニーから急速に興味が薄れ、あたしの視線はそれより上の階に移っていた。  雨は止んだのだろう。  雲の向こうで存在感を示し始めた太陽が、窓に貼られた遮光フィルムに反射している。  連中に、法の裁きを受けさせるつもりなど毛頭無かった。  あの時の日本代表の本田のように、何もかも1人でやってみせると決意したはずだ。  ならばここから先、女のあたしに何が出来るのだろうか。  政やんが死んでから何度も考えたことなのに、その度に堂々巡りをした挙句、後回しにしてきた問題だった。  まずはあの2人を見つけ出すことだと自分に言い聞かせ、頭の隅に追いやっていたとも言えるだろう。  けれど今、決断しなければならない時が来ている。  白く細い自分の両腕を見ながら考えた。  連中と刺し違える覚悟があれば殺すことは出来る。  1人になるのを待って、順番に闇討ちすればいい。  しかしヘタをすれば命を落とすかも知れないし、生きていても警察に捕まるだろう。  例え自分に覚悟があったとしても、残される者達の悲しみを思えば、選ぶことの出来ない道だ。  いや、周到に計画を練れば、無傷かつ捕まらずに犯人不明の未解決事件にすることが出来るかも知れない。  覆面をし、催涙スプレーを使い、刃物で一気に刺し殺すくらいあたしにだって出来るはずだ。
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