ツクツクボーシ

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眩しい……。 ボク、目が見える! 初めて見る外の世界は、すべてが輝いていて、美しかった。 お陽さまが昇って、風が流れて。 風に押された雲が、時折お陽さまを隠すと、いろんなものが、また違う色になる。 お陽さまが山の向こうに沈んで、代わりに細い細いお月さまが、赤い空にぶら下がるまで、 その日のボクはよじ登ったその場所でそのまま、ただボーっと、外の光と空気を、肌で感じてた。 次の日、またお陽さまが顔を出したら急に、 ひとつの気持ちが衝き上げてきて、ボクは我慢できなくなった。 歌いたい! ボク、歌えるのかな? でも歌いたい。歌いたい! さわさわと音を立てた風が、ピンと伸びたボクの背筋を揺すって、囁いた。 「声を出してごらん」 そう聞こえた。 ――声が出せるの!? どうやったらいいのかもわからないまま、ボクは身体に力を入れた。 声が! 声が出る!! ボク、歌える! 歌えるんだ!! 嬉しくて、嬉しくて。 昨日登った場所にしがみついたままボクは、 お陽さまが傾くまで、1日中歌った。 幸せな、幸せなその1日。 真っ暗になってから、すぐそばで水の匂いがするのに気がついた。 飲んでみたらとっても甘くて、疲れた身体に心地よく染み込んだ。 そしてなんだか懐かしい味。 ボクは安心してそのまま眠りについた。
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