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視界がまたかすんできた…
それと同時に頭がもうまわらない。
何をしようとも思えない。
もうーー
何も出来ない。
『それでいいのか?』
目の前にいる人が倒れている俺に話しかけている。周りの焼けている音で声などかきけされそうなのに俺には物が焼けている音よりも鮮明に耳に入ってくる。
『このまま死んでしまっていいのかと問うているんだ。』
そんなの決まっている。
でも声が出ない。というか出せない。もうーー
『もしも本当に生きたいと願うのなら声に出せ!そして我の名を呼んで見せよ!』
女の子?口調から取れば古風で女の子には思えないが声の色は年がはっきりと分かる若々しさがあった。
呼びたい。
だけど…呼べない。
頭だけでなく体全体の感覚が無くなっていくのが分かる。そしてその感覚から読み取れた俺の答えはーー
"ごめん。"
心の中でそう叫ぶ。
『我の名は"イフリート"炎帝の神にして人の世を護るもの。我には成し遂げたいことがある!』
ああ…
嫌でも視界がはっきりしていくのが分かる。イフリート?炎帝の神?そんなのはどうでもよかったのだ。
ただ、目の前にいる神と名乗る女の子が泣いている。その姿を見ただけで視界がはっきりしていくーー
そしてその姿が美しいと思った。
紅い長い髪を靡かせて俺の前に立って泣いている。それだけで俺の答えはもう一度出ていた。
"この人の涙を見たくない。"
その一心で俺は残された声で思いっきり叫んだ。
「イ……フ…リート!!!!」
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