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月夜
真っ黒な川面にズルズルと引き摺り込まれる私の下半身…
急激に衰弱してしまった今の私には静かに流れる川の流れさえもが激流に感じられる。
このままでは水流に逆らえず呑み込まれ溺れてしまう…
こんなに私の身体って重かったかしら?
全然、手足に力が入らない!
麻痺しているの?
水中で脚を蹴りつけることも腕をバタつかせることさえできない。
今さっきまで、この浅瀬で何の心配もなく水浴し水と戯れ遊んでいた私だった…
しかし身動きできなくなってしまった今の私では川の流れに抗えない。
穏やかで緩やかな流れにも関らず逆らえず波に引っ張られる。
もう首まで波に揉まれてしまった。
必死に波間から顔を上げ息をするのが精一杯だ。
真っ暗闇の夜空を見上げながらパクパクと口を動かし、出来るだけ多くの空気を飲み込もうとした。
だが、口を開閉するたび水が流れ込んで来る…苦しくて水を吐き出す…もう呼吸なんて無理だ。
『ゲボゲボっ..助け..ゲボッ..誰か..ゲブッ..助け..ゲボゲボ…』
水をガブガブ飲みながら…老婆のような嗄れ声で私は思わず仲間に助けを求めていた。
だが遅すぎた、溺れながらでは大声なんて出ない。
こんな夜遅くでは誰もが眠っている…
まして嫌われ者の私を助けに来る物好きなんている筈がない。
苦しい、苦しい..息が出来ない..苦しい、苦しい...
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