崩壊の戦い

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「つっ……!」 防御に回す魔力が疎かになって傷を負った。 集中力も無くなってきている。 なんとかして立ち上がろうとするがそこに――三射目の矢が放たれた。 咄嗟に巧は地面に魔力の塊を叩きつける。 その衝撃で生まれる爆発。 巧はそれを受けて後方へ大きく吹き飛び矢を躱す。 威力は控えめにしていた為に何ら支障はなく、空中で身を翻して体勢を立て直し着地する。 「はぁ……はぁ……きっついな…………」 「いい加減諦めろや。 じゃねぇと本当に手遅れになるぞ」 「諦め、る? はっ……冗談じゃない。 俺は…………あんた倒すまで――諦めないさ」 そう言い、笑みを浮かべる巧の右手には先程までなかったものがあった。 それは先のやり取りの間に巧はポケットから取り出そうとしていたモノ。 吹き飛んだ隙にポケットから取り出していたのだ。 それはビー玉によく似た物。 しかしその球体内では雷のようなものが動いていた。 「すっかり忘れてたよ……これのこと」 「あ? それは……」 「あんたなら……知ってるだろうさ。 まぁこんなの、あんたレベルになったら…………滅多に見なくなるか」 巧の手にあるもの。 それはまだ巧が魔法学校に入学して間もない頃、近衛 凜と初めて出会った時に襲いかかってきた雷の獣の姿の魔物から手に入れたもの――名を雷玉。 魔装具を作る時などに用いられるそれを、巧は記念にずっとお守りのように持っていた。 しかしこれには他にも使い方がある事を巧は師の香芝から教えられる。 巧は体内に内包する魔力と雷を出来るだけ表に出し、雷玉を持つ手にへと集中させていく。 そして雷玉を握り締め――――砕いた。 瞬間――右手に目を開けていられないほどの光を放つ雷が生み出される。 「なに――っ!?」 「これが俺の切り札さ。 一度きりのな」 雷玉が持つ力。 それは雷玉が砕け壊れる時、周囲の雷を増幅させるというものだ。 ただでさえ魔装具により増幅していたものを雷玉によりさらに増幅させた。 それは響也ですら戦慄を覚えるものであり、神具の域にすら達する質の雷となる。 「――いくぞ」 「させるかよ!」 巧が動こうとした瞬間、響也は恐るべき速度で矢を四本射る。 巧の両手両足に正確に迫るそれは――突如現れた青い雷の壁に阻まれた。 「俺の矢を――!」 その隙に――巧は右手に雷の槍を作り出す。
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