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「さて、と」
雨宮達三人が、206号室に入る。
「話の前にちょっとトイレ行って来るわ」
雨宮が、コート掛けにコートをかけ、トイレに入る。
バリバリバリバリ!!
チュドーン!ピュイーン!!
ドドドン、ドンドン、ピーピロリ~
「なに!?この退廃的かつ反体制的で、それでいて心を揺さぶる魂のサウンドは!?」
「先生が用を足している音よ」
小花の質問に、花子がいつの間にか用意した番茶を啜りながら答える。
「翔さん、流石だわ!いつでも抜け目無く私の心をフォーリンラブさせてくれるなんて……」
「トイレの音から始まるラブストーリーって、どうなんでしょうね?」
そんな話をしている内にドアが開き、雨宮が出てきた。
「ふう、スッキリした」
満足そうにソファに腰掛ける雨宮。
「あ、私もトイレ借りますね」
花子がゆっくりと席を立つ。
「お姉ちゃん。お下品よ?そういう時は『花摘みに行って参ります』って言わなきゃ」
「小花は自分の頭の中にある花畑から存分に花摘みしてなさい」
花子は辛辣に言い放つと、レバー式のドアノブに手をかける。
その瞬間、トイレの中から水が流れる音がした。
「……先生、もしかして流し忘れました?」
花子の言葉に、雨宮はしまったというような表情を浮かべる。
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