読み飛ばしても問題ない生前のお兄ちゃんの話

1/8
934人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ

読み飛ばしても問題ない生前のお兄ちゃんの話

俺が死んだのは、家族を守る為だった。母親は失踪し、堕落していた父親は多額の借金を作った後に消えた。それを返済するため自分に出来ることは何でもやった。体を汚すことも他人を陥れることも、弟妹を守るためなら何でも。 それでも一人で返すには高額で、ある日借金取りが家に来た。殴られて蹴られて押さえつけられて意識も朦朧としていたが、弟妹には手を出さないでくれと頼み続けた。 そうしたら借金取りの一人が顔を覗き込みながら、一つの提案を出してきた。 「そんなに金に困ってんなら、テメェの身体を売りゃあいいだろ?」 男が言うには、健全な青年の臓器は中々に高く売れるらしい。提示してきた金額は借金返済には十分な額だった。 俺はそれを聞いて迷い無く了承してしまった。弟妹には絶対に手を出さないことを条件に、自分を売った。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!