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その人形師の作る人形は、服飾や髪型などに相違はあれど、どの人形にも共通する大きな特徴があった。
ブルーグレーの大きな瞳。
眉間に斜めにつけられた傷。
そして――まるで命あるように動く。
人形師に抱き着くまだ素体だけの人形も、その特徴をすべて持っていた。
いとおしそうに人形を撫でる人形師を、ソファの前に片膝を立てて座り込んだ同居人はちらりと見やると自分のカップに口をつける。
「…相変わらず見事な出来映えだと思うんだけど。何が失敗なんだ?」
「べっつにー。キミは知らなくても良いことだよ」
ねー、と人形と目を合わせる人形師に、同居人は金色のつり目を軽く眇めると大して興味も無さそうに「ふぅん」と呟いた。コーヒーを啜る彼女に、人形と戯れながら人形師が問い掛ける。
「というかはーくん、昨日どこ行ってたの?」
「おや、バレてた。いやいや、ちょっと依頼をこなしに」
「えっ、聞いてない。怪我は?大丈夫?」
「迷宮経験アリの元傭兵ナメんなよ、と」
にっと笑った自称元傭兵は、「あれが報酬」と簡素な木のテーブルに乗せられた巾着袋を親指で指した。ずしりと重そう――と言うわけではないが、それなりに入っていそうな膨らみ方だ。
「ん。あれ、今月分の食費ってことにしといて」
「はーい。あ、後でセイレーン行くけどはーくんも来る?」
「行く行く。さー飲むぞー」
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