序章

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その日の深夜。 月明かりもぼんやりとして薄暗い街中。 日中の怪物による被害はさほど大きく無く、街の復旧迅速に行われているようだ。 しかし今は夜分。 慌てずとも翌日には復旧しきれるであろうと、作業は中断している。 そんな静まり返った街の上空に、黒い雲が渦巻いていた。 夜だからとか、月明かりが薄いからとか、そういった黒さではない。 正真正銘、雲そのものが黒いのだ。 だが、街の人は誰も気付かない。 誰も夜空など見ていないのだ。 寝静まっているのが大半で、起きている僅かな人も外なんか見ない。 そうして人知れず渦巻く雲は、また人知れず宙に散っていった。 それはまさに、超常現象だった。
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