第1話

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空(クウ)を抱く腕が欲しい 霧をかすめる爪に少し 纏わる露を舐めとって 遠くの巨森が霞むほど 深く冷涼な霧が或る 私は高台の岩の上で明日を讀む トンビが近くを飛んでいる 己の迷いで森に迷う 踏んだ草木に花は香る 雨は鼻を惑わせる 落とした心を探すよう 目を凝らしても何も無い 傷を分け合う二樹の洞 雨と風はしのげるか 忘れたばかりの悪意を尚 思い出しては涙する 冷えた躰を温める 衣も何も今は無い ――――冷涼なる空気だ 孤独がとても愛惜しい
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