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僕の知らない内に、今回の事件は解決に向かったらしい。
それにしても、照玄和尚のさっきの嘘...
あれほど、解りやすい嘘はなかった。
彼が着ていた袈裟の裾が、泥だらけになっていたのだ。
大事な袈裟を汚してまで、自分を助けに来てくれたのだと思うと、思わず目頭が熱くなる。
いつか、この恩返しが出来るような和尚になろう...
今の僕に出来ることは、カヨ子さんの葬儀が無事に終わるのを祈ることくらいしかない。
心を落ち着かせ、両手を合わせたときだった。
視界に、窓からの光が飛び込んできた。
何気なく、カーテンを開けて外を眺めると、雲の隙間からうっすらと光が射していた。
晴れやかな空を見届け、倫広はゆっくりと目を閉じた。
良かった。
どうやら、雨はあがったらしい。
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