幻が…

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小雀達が姦しい囀りにて目覚める。 ちと…清々しいって訳には行かない目覚めになってしまったが…致し方あるまい。 寒さが随分と和らいだ晩春の朝にてベッドよりモソモソと起き出す、俺。 目覚ましが鳴り響く前に小雀共に起こされるとはなぁ、ハァっ。 ベッドより身を起こしベッドの直ぐ近くへと設置してあるテーブルの上へと置いてあるタバコの箱へと手を伸ばす。 軽く箱を振りタバコを取り出し口へとな。 ジュポのオイルライターにて火を点けると軽く煙を肺へと送り込み吐き出す。 紫煙を燻らせた後で灰皿へとな。 うむ、朝の一服は何物にも代えられぬってヤツだ。 今日も仕事が詰まっている事だろう。 先ずは軽く情報収集と行こうか。 そう考えた俺はビションを起動する事にな。 ビジョン…それは近年に発見された素粒子にて発展した素粒子工学の寵児っうヤツだろう。 コイツは家庭から従来のモニター型映像機を駆逐してしまった。 何物かと言うとだな、3D映像機っえば良いだろうか? おーっとぉ、勘違いしちゃなんねーぞ、モニター映像をブレさせて目の錯覚にて写し出される虚像っうチャチな3D映像では無い。 コイツは素粒子にて構成された本物の3D立体映像なんだよ。 無論、触る事なんぞ出来ないんだが…雅に前後左右上下がリアルに再現されている代物なんだよ。 えっ、詳しい原理? そんな物は知らん。 いや、なんたら粒子を機械的に制御して立体的な画像を再現しているって事位ならば分かるが… ま、偉い学者さんが素粒子について発見して研究して生まれた代物っう訳さ。 俺達みたいな素人は、その程度知っていれば問題あるまい。 売り出されている家電は便利だが、その詳しい専門的原理を追求して知るヤツなんざぁ滅多に居ないろうしな。 俺達の様な使用者は「科学って凄ぇなぁ」っう事で良い筈だ、うん。 そんなビジョン様の最新型ってぇのが、つい先月に売りに出されてな。 コイツが、また凄いんだよ、これが。 複数の素粒子を組み合わせて発する機能なのだがな、コイツが立体映像に留まらないって訳よ。 先ずは…音。 いや、今迄もさぁ、無論、音は出てたぜ、当たり前だな。 けどな、この音ってぇヤツは曲者でな、辺りへの迷惑行為にも成りかねん代物な訳だ。 所謂、騒音問題っう訳さ。
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