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誰もいない、
そんな場所を目指して、
ただただひたすらに走った。
言うまでもなく、禁術を行うため。それが何を起こすかは考えなかった。考えてはいけないような、そんな気がしたから、考えないようにした。
会いたい。
ただ、彼女に会いたい。
それだけのことを考えて。
そのうちに、誰もいない右殿の最端に辿り着いた。元々、鬼狩りの本部が措かれていた場所だが、今は使われていない。
当然、人の影など皆無。
広い部屋の中央に春は陣を描き出した。陰陽の印を中央に据えた陣は、八芒星の陣を重ね合わせたものでその周りには十の数字が刻まれた。描き上げると春は中央に進み、陰の側に刀を立てて、暢慶の血が付いた着物を陽の側に置いた。
「――いいのか…………?」
自分自身に問う。
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