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『この人ね。――昔、付き合ってた彼女を死なせちゃったことがあるんだって』
――本当なのかな。恵理奈の言ってたこと……。
考えているうちに何だか胸が痛くなって、私は目を開けた。
やめとこう。ただの噂話に過ぎないのに、想像して辛くなってもしょうがない。
ふと視線を上げると、向かいの壁の掲示板にずらりと貼られた部活動の勧誘ポスターが目に入った。
……あ……。
吸い寄せられるように足を進め、そのポスターの前に立つ。
『放送部員、募集!』
高揚していく自分の気持ちを理解できないまま、私の目は曲が終わるまで、そのマジックで書かれた几帳面な文字に釘付けになっていた。
『未経験者大歓迎!』
『まずは見学に来てください』
――放送部なんて、無理。
部活は合唱部にするって決めたじゃない。
中学からの友達と約束しちゃったし、今更――。
『――お聞きいただいたのは、パンダ子さんのリクエストで、いきものががり
「茜色の約束」でした。
それでは、本日の『恋パラ』はここまで。
最後までお付き合いありがとうございました。
お相手は、サラシナミツルでした』
……更科、ミツル……。
手書きのポスターの一番下には、『入部希望者は部長:3-B更科ミツルまで』という記載があった。
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