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 プロローグ    午後の日差しが向かいの校舎の屋根にかかり、わずかに弱まった日差しが、図書館の窓へ差し込む。正しく絵にかいたような穏やかな午後の光景であった。  ここは、ルーン魔法学園にある図書館。授業中に一人の生徒がある本を見つけてしまった。 「これ、面白そう」  闇魔術について詳しく書かれたそれは、闇魔術に関心あるその生徒の心をひどく躍らせてしまった。魅力的な内容の召喚で、成功すれば一躍生徒の間で有名に――そう学園一有名で人気者の生徒アンナのように――なれる。いや、きっとなれる。  ――なって見せる!  尊敬の眼差しを向けてくる生徒の輪の中心に立ち、その隣にアンナの姿を思い浮かべて悦に入る。 「よし、やってみよう」  これ程、高度な術だと本来ならば闇魔術のラフォード教師の許可がいるが、きっと許可は下りないだろう。ならば――。 「先生にばれないように、こっそりと準備しないと」  この生徒の好奇心が後にルーン魔法学園へ大きな騒動を起こす事になる。その事をまだ知らない生徒は今夜決行する意思を固めて手にしていた本を胸に抱いた。
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