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持ってきてくれた包みは、甘く煮た洋ナシだった。
「俺が作ったんで、うまいかはわからないんですけど」
そう言いながらローはがさがさと紙の包みを開けて、びんに入った果物を見せた。クリーム色の皮をむいた洋梨が、少し黄色い液体に浸かっている。ローは生真面目な表情で慎重に瓶を開いた。
中の洋梨を皿に取ると、フォークで細かく切っている。その一つを刺すとわたしの口に向けてそっと差し出した。
自分で食べれるんだけど、でも、ローが食べさせてくれるって言うんだからお断りする理由なんかないよね?
溶けた銀の瞳が、わたしを不安気に見ている。おずおずと口を開けるとそっと口にかけらが押し込まれた。柔らかく煮てあるそれは、とても風味が良く、噛むとあっという間に蕩けて消えてしまった。
「うわ、すごくおいしいよ!」
ぱっとローの顔が明るくなる。耳が嬉しそうにひょこっと立った。わたしはにっこり微笑んで、餌を求める雛鳥のように口を開けた。ローが慎重に次のかけらを口に入れてくれた。もぐもぐと噛みながら頷くと、ローが笑み崩れる。
「ローは果物食べないって言ってなかったっけ?」
飲み込んで、はあと溜息をついてそう尋ねる。
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